給与明細一覧表のPDFしかないときの報告書づくり

給与明細一覧表のPDFしかないときの報告書づくり

ベースアップ評価料の報告書を準備しようとしたとき、手元に「給与明細一覧表のPDF」しかなく、どう取りかかればよいか困ることはありませんか。CSVデータがなくても、対象期間の全月分の給与明細一覧表PDFが揃っていれば、8つの確認事項を順に整理することで報告書の作成準備は問題なく進められます。

日々の診療で忙しいなか、細かい数字が並ぶ書類を確認するのは大変な作業です。今回は、私たち事務長代行のincrewが、給与明細一覧表のPDFからどのように報告書の準備を進めているか、実際の手順や確認ポイントをご紹介します。

この記事の要点

  • 給与明細一覧表のPDFでも全月分あれば報告書の準備は進められる
  • 手当の名称や常勤換算など最初に必ず確認する項目は8つある
  • 社労士・事務長代行・院長で役割を分けると院長の負担が軽くなる
  • 作成後は根拠レポートと今後の賃金改善アドバイスをセットで確認する

この記事で紹介している報告書・届出の準備は、事務長代行のincrewがお手伝いします。
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給与明細一覧表のPDFから進める報告書づくりの流れ

給与明細一覧表のPDFから報告書を作成する際は、対象期間のデータを漏れなく集め、集計に必要な情報を揃えることから始めます。

私たちが報告書の準備をお手伝いする際は、給与データとして「支給控除一覧表」のCSV、または「給与明細一覧表」のPDFを対象期間の全月分いただいています。医院への資料依頼では、LINEで送れる短い案内文も用意して、院長先生の手間をできるだけ減らすようにしています。

報告書の準備に必要な資料は次の通りです。

  • 賃金台帳(または給与明細一覧表の全月分)
  • 初診・再診・歯科訪問診療(同一建物/同一建物以外)の算定回数
  • 医療機関コード・所在地・開設者名・担当者名と電話番号

また、スタッフ名簿と給与明細で氏名の表記が異なる場合(旧姓の使用や漢字の表記違いなど)があります。その際は、同一人物であるかどうかを事前に確認したうえで集計に入ります。

私たちが最初に必ず確認する8つの事項

給与データを受け取った後、私たちは計算違いや手戻りを防ぐために、最初に8つの項目を必ず確認しています。

  1. 基本給で上げているか、「ベースアップ評価料手当」として支給しているか(賞与も同様。賃金の上げ方によって計算方法が変わります)。
  2. 前年度の報告書の控え(繰越額を確認するため)。
  3. ベースアップ評価料(Ⅱ)を届け出ているか、その区分、年度の途中で区分が変わったか。
  4. 算定開始月。
  5. 常勤換算数(非常勤スタッフの勤務時間を常勤職員の所定労働時間で割って換算した人数)を職種別に、2つの時点で確認(役員は除外)。
  6. 歯科医師は40歳未満の人だけが対象。
  7. 途中で退職した人の最終支給月、雇用形態が変わった月。
  8. 定期昇給の月(4月とは限りません)。定期昇給分とベースアップ分は分けて数えます。

なお、算定していない月がある場合でも、中間報告は出しておく方針にしています。制度の要件や様式は変更されることがありますので、最新の点数・要件・様式は、管轄の地方厚生局や告示・通知でご確認ください。

専門家と医院の役割分担

報告書の作成準備をスムーズに進めるには、院長先生、外部の専門家、事務長代行の役割を明確に分けることが大切です。

行政への手続きや届出などの専門的な手続きは社労士(税務は税理士)が行い、私たちはその準備と連絡を担当します。当社は社労士や税理士と医院の間に立ち、資料の準備ややり取り、院内での運用を受け持つ役割を果たします。

担当 受け持つこと
社労士(税務は税理士) 専門的な判断、行政への手続きや届出
私たち(事務長代行) 社労士・税理士と医院の間に立ち、資料の準備・やり取り・院内での運用を担当
院長先生 診療や、院長にしかできない大切な業務に専念

資料の準備や専門家とのやり取りは、本来は院長先生が行うことが多い業務です。しかし、非常に時間のかかる事務作業であるため、院長先生がご自身ですべてを行うのは時間の使い方として効率がよくありません。院長先生の大切な時間は、日々の診療や医院の将来の方向づけに使っていただきたいと私たちは考えています。

以前私たちが支援した医院でも、忙しい院長先生が請求や給与関係の業務を一人で抱え込み、業務が滞りがちになってスタッフからの信頼感が薄れていたことがありました。事務長代行が入ってからは、給与体系、昇給・賞与の考え方、他院の賃上げ事例が判断材料となり、院長先生がスピード感をもって決められるようになりました。その結果、院長先生が診療やスタッフと向き合う時間が増えています。

この作業を、まるごとお任せいただけます

ベースアップ評価料の実績報告書・中間報告書や施設基準の届出に必要な書類の準備、院内掲示とホームページ掲載用の文章の案まで、私たちがお手伝いします。社労士・税理士の先生とのやり取りも、間に入って進めます。

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作成後の根拠レポートと今後の賃金改善アドバイス

報告書の準備ができた後は、数字を並べるだけでなく、計算の根拠と今後の見通しをあわせて確認することが重要です。

当社では、報告書の準備が完了した段階で、次の2つのレポートをセットでお渡ししています。

  • 根拠レポート:どのような計算根拠で作成を進めたか、作成の経過をまとめたもの
  • 今後の賃金改善アドバイスレポート:算定の予測、目標に対する不足額、次年度への繰越の見込みをまとめたもの

レポートをお渡しした後は、「来月から1人いくら上げればよいか」という具体的な配分の相談を受けることがよくあります。その際は、職種、常勤換算数、現在の不足額をもとに、具体的な金額を割り出してご提案します。

翌年度の賃金配分案を作成するときは、医院の状況に合わせて次の2案をお出ししています。

  • 月給で配分し、年度末の3月に一時金で使い切る案
  • 定期昇給月までに月々の支給で使い切る案

年度末の精算と賃金改善を継続する実務の手順

ベースアップ評価料の原資は、原則としてその年度内に賃上げとして充当する必要があります。

年度末(3月)の精算では、3月支給分までに賃上げを済ませる前提で試算を行います。もし不足分が出る見込みであれば、3月に調整金として支給する形をとります。締め日と支給日がずれる医院の場合は、何月支給分で精算を行うかを事前に確認しておく必要があります。

厚生局への確認にもとづく整理として、その年度の評価料収益は、その年度の賃上げに充てられているかを見ます。前年度に多く支給した「超過分」を、翌年度分の賃上げに充てることはできません(前年度の報告書の控えで確認する「繰越額」とは別の扱いとなります)。原則として3月までに使い切る形をとりますが、残った場合は翌年の実績報告までに使い切る運用となります。最終的な判断は、管轄の地方厚生局にご確認いただくよう添えています。

制度を一度整えて終わりにせず、毎年の算定状況と賃金の支給実績を照らし合わせながら、無理のない賃上げ計画を立てていくことが医院の安定した運営につながります。

よくある質問

Q. 給与明細一覧表のPDFから集計する際、抜け漏れを防ぐにはどうすればよいですか?

A. 対象期間の全月分が揃っているかを最初に確認し、スタッフ名簿と突合して退職者や氏名変更の有無を照合することが確実な方法です。

Q. 途中で退職したスタッフがいる場合、どのように扱えばよいですか?

A. 最終支給月と雇用形態が変わった月を確認し、在籍期間中に支給された給与や手当のみを対象として集計を行います。

Q. 算定金額に対して賃上げ額が足りない場合はどうすればよいですか?

A. 3月支給分までに使い切る前提で試算を行い、不足額を3月の給与で調整金や一時金として支給することで精算を図ります。

まとめ

給与明細一覧表のPDFしかない場合でも、全月分のデータを揃えて8つの確認事項を順に洗うことで、報告書の準備は着実に進められます。まずは手元にある直近の給与明細一覧表を開き、手当の名称が基本給か「ベースアップ評価料手当」のどちらで支給されているかを確認することから始めてみてください。