生成AIで院内アプリを作るときの壁打ち実務

生成AIで院内アプリを作るときの壁打ち実務

日々の紙やExcelの業務を、スタッフがスマホから入力できる仕組みにしたいとお考えの院長先生もいらっしゃるのではないでしょうか。最初の壁打ちで確認すべきなのは、「使う人・元の紙やExcel・スマホ利用の有無・A4印刷の有無・運用ルール・人の入れ替わりへの対応」の6点です。これらを設計前にすり合わせておかないと、作り直しや現場での混乱が起こりやすくなります。

私たちincrewでは、生成AI(Claude Codeなど)を活用し、歯科医院の紙やExcelの業務をWebアプリにするお手伝いをしています。今回は、開発前の最初の壁打ちで具体的に何を確認しているのか、その進め方をご紹介します。

この記事の要点

  • 最初の壁打ちで使う人や端末、印刷要否、ルールなど6点を確認する
  • 元の紙やExcelを読み込み、計算式や運用ルールをそのまま引き継ぐ
  • Googleの無料枠を活用し、契約終了後も医院にデータが残る設計にする
  • 固定URL、スプレッドシート、QR付きA4説明書をセットで納品する

院内の紙やExcelの業務を、スタッフがスマホで使えるアプリにする仕組みづくりを、事務長代行のincrewがお手伝いしています。
無料のオンライン相談(Zoom)はこちら →

今の業務のどこで時間や手戻りが出ているか

デジタル化を進める際は、まず日々の業務フローのどこで転記や確認の手戻りが発生しているかを特定することが大切です。手作業が多い部分を曖昧にしたまま進めると、現場で使われない機能が増えてしまいます。

たとえばシフト作成の場合、スタッフから出された紙の希望を集め、休みの重複を手作業で確認しながらExcelに打ち直す作業は、毎月の負担になりやすい部分です。

私たちが業務をお預かりするときは、現在使われている用紙やExcelシートをそのまま見せていただくことから始めます。どこで入力が滞り、どの確認に時間がかかっているかを院長先生と一緒に洗い出し、アプリ化すべき核となる部分を見極めます。

デジタル化の前に決めるルール・入力項目・担当者

アプリを作り始める前に、運用のルール、必要な入力項目、操作する担当者を明確に決めておく必要があります。この前段階のルール決めが成否を分けます。

私たちが最初の壁打ちで確認する6つの項目

当社では、生成AIを使ってアプリを制作する際、最初の「仕様の壁打ち」として以下の6項目を必ず確認しています。

  • 使う人:院長先生だけが見るのか、チーフが管理するのか、全スタッフが入力するのか
  • 元の紙やExcel:現在使っているひな形や計算式がどう組まれているか
  • スマホで使うか:スタッフがスマートフォンから入力する必要があるか
  • A4で印刷するか:最終的に紙に出力してスタッフルームに掲示する必要があるか
  • ルール:労働時間の上限、締日、申請期限などの制約条件
  • 人の入れ替わりへの対応:スタッフの入職や退職があったとき、誰が名簿を更新するか

事前に決めておくべきルールの実例

シフト作成アプリを作る場合、最初にルールを決めずに進めると、後からスタッフ間でもめる原因になります。実際に私たちが支援した医院では、以下のような条件を事前に取り決めました。

  • 常勤は週40時間・4週160時間を守る
  • 祝日は1日8時間として数える
  • 非常勤は希望どおり
  • 中途半端な勤務時間ができないよう、使えるシフトの形をあらかじめ決めておく

なお、時間の上限や休日の扱いなど法的な判断が伴う重要事項は、必要に応じて顧問社労士の先生に確認いただきながらルールを固めていきます。

今あるツールを使う方法も含めた選択肢と、選び方の基準

医院のアプリ開発では、高額な専用ソフトを導入するのではなく、Googleの無料の仕組みを組み合わせる方法が適しています。維持管理の負担を抑え、自院の資産として残すことができるからです。

仕組み・ツール 主な用途 医院側のメリット
Googleスプレッドシート データの保存、計算、名簿管理 普段見慣れた表形式で確認・修正ができる
Google Apps Script(GAS) アプリ画面の表示、自動計算処理 無料枠内でWebアプリを動かせる
Googleフォーム 単純なアンケートや届出受付 手軽に集約でき、設定の手間が少ない
Gemini API(無料枠) テキスト整理や補助機能 追加の月額料金をかけずにAI処理を組み込める

私たちは、Google Apps Script、Googleスプレッドシート、Gemini APIの無料枠といった仕組みを組み合わせて構築しています。医院所有のGoogleアカウントの中に作成するため、もし当社との契約が終了した場合でも、アプリとデータは医院の手元に残ります。

また、医院名、上限金額、スタッフ名簿などは「設定」シートに置き、プログラムを直接触らなくても変更できるようにしています。

院内の紙の業務を、スマホで使えるアプリに

仕様のご相談から、作成・納品、スタッフ向け説明書づくりまでお任せいただけます。医院のGoogleアカウントの中に作るので、アプリとデータは医院に残ります。

院内アプリについて相談する →

小さく試す手順、スタッフへの共有、使い始めた後の見直し

アプリ制作は一気に全体を動かそうとせず、合意した設計をもとに試作し、動作確認を重ねながら段階的に進めます。

制作から納品までの5つのステップ

当社のアプリ制作は、以下の5段階の手順で進めています。

  1. 仕様の壁打ち:使う人、元の紙やExcel、端末、印刷、ルール、人の入れ替わりを確認
  2. 設計への合意:画面イメージやルールをすり合わせ
  3. 作成:元の紙やExcelを読み込み、計算式やルールをそのまま引き継いで作成
  4. 公開:URLが変わらない方法で公開
  5. 動作確認と納品:テストデータを入力して検証し、納品

シフト作成アプリの例では、スタッフは自分専用のURLから希望だけを入力します。管理者画面では自動生成、時間帯ごとの人数の見える化、人員不足の警告、A4縦1枚の印刷が可能です。Excelのシフト表の形をそのまま使いたい医院には、Excelのひな形にシフトを書き出す形でも作成しました。

運用でつまずかないための配慮

実務のなかでは、以下の点に配慮して設計しています。

  • 処理中表示を必ず入れる:生成中は「シフトを生成しています…」と表示します。何も出ないとボタンが二重に押されてエラーになるためです。
  • 最初からA4印刷に対応:画面は最初からA4縦1枚できれいに印刷できるようにしておきます。
  • 年度切替を最初から設計に入れる:URLは変えず、過去のデータは年度ごとに残し、名簿は管理シートで足せるようにします。
  • 公開版の更新:公開後に直したときは、公開版の更新を忘れずに行います。

費用・移行・教え方の負担と、効果を確かめる見方

新しい仕組みを定着させるためには、スタッフへの教え方の負担を減らす準備が欠かせません。

納品時のセット内容

アプリが完成した際、以下のセットを医院のGoogleドライブに保存して納品しています。

  • 固定のWebアプリURL
  • Googleスプレッドシート
  • QRコード付きのA4スタッフ向け説明書

手元ですぐ入力できるよう、QRコード付きの説明書をA4用紙1枚で用意することで、院長先生が一人ひとりに教える負担を減らしています。

よくある質問

Q. プログラミングの知識がなくても修正できますか?

A. スタッフ名簿の追加や上限金額の変更は、スプレッドシートの「設定」シートから行えます。プログラム自体の修正が必要な場合は私たちが対応しますので、院長先生がコードを書く必要はありません。

Q. 契約終了後、作ったアプリは使えなくなりますか?

A. そのままお使いいただけます。アプリとスプレッドシートはすべて医院のGoogleアカウント内に作成するため、契約終了後もデータとともに医院に残ります。

Q. 途中でシフトのルールが変わった場合はどうすればよいですか?

A. 名簿の増減は管理シートから追加可能です。勤務時間の上限や祝日の数え方など根本的なルールの変更が発生した場合は、プログラムの調整が必要となりますのでご相談ください。

まとめ

生成AIを活用した院内アプリの作成は、最初の壁打ちで「誰が・どのように使い・どんなルールで動かすのか」を整理しておくことが大切です。元の紙やExcelの計算式を引き継ぎ、合意してから設計に入ることで、手戻りを防ぐことができます。

まずは現在お使いの用紙やExcelを手元に用意し、どの作業に時間がかかっているか整理してみることから始めてみてはいかがでしょうか。